top of page

心理学から読み解く、これからのチーム

  • 曽根原 士郎
  • 1月20日
  • 読了時間: 5分

更新日:1月21日

ヒトは「仕組み」で動く、という時代は終わったと思っています。


1. 「アメとムチ」の100年を、ちょっと振り返ってみませんか?

「もっと頑張ってもらうために、評価制度を見直そう」

「効率を上げるために、新しいマニュアルを作ろう」


リーダーとして、ついそう考えてしまうこと、ありますよね。

実はこの「仕組みで人を動かそう」という発想、もともとは100年くらい前の心理学から始まっています。


かつての心理学は、目に見える「行動」こそがすべてだと考えていました。

有名なのは、心理学者のスキナーが行った「スキナー箱」の実験です。ネズミがレバーを押すとエサが出るようにしておくと、ネズミは喜んでレバーを押し続ける……というもの。


S(刺激) → R(反応)


この「刺激(S)を与えれば、反応(R)が返ってくる」というシンプルな数式は、ビジネスの世界でも「インセンティブ(報酬)を上げれば、みんな動くはずだ」という仕組み至上主義の根っこになりました。


でも、人間はネズミのように単純な「自動販売機」ではありません。


2. なぜ、立派な「仕組み」を作ってもチームは動かないのか

1950年代に入ると、心理学の世界では「認知革命」という大きな変化が起きました。

ただ「刺激と反応」を見るのではなく、その間にある「その人の頭の中で何が起きているか(認知)」をちゃんと見ようよ、という流れです。

ここで、数式はこう書き換えられました。


S(刺激) → O(解釈・OS) → R(反応)


この真ん中の「O(Organism=個人の解釈)」こそが、私たちが「OS」と呼んでいるものです。


リーダーが「仕組み(S)」という刺激を投入しても、それを受け取るメンバーの「解釈(O)」というフィルターを通るときに、意味がガラッと変わってしまうんです。


例えば、「再現性を高めるためのマニュアル(S)」を渡したとき、メンバーのOS(O)が「これは私を縛るための監視道具だ」と解釈してしまえば、返ってくる反応(R)は「思考停止」や「隠れた手抜き」になってしまいます。


立派な仕組み(S)をいくら整えても、中身のOS(O)が古いままだと、期待通りの行動(R)は出てこない。これが、多くのチームが抱えている「ボタンの掛け違い」の正体です。


3. 「仕組み」は守り。攻めは「OSのアップデート」

もちろん、仕組み(S)がダメだと言いたいわけではありません。

「いつでも、誰でも、同じ品質でできる」という仕組みの持つ「再現性」のパワーは、組織を支える大切な「足腰」です。3年かかる習熟を1年に短縮できるのも、仕組みの力です。


でも、変化が激しく、多様な価値観が入り乱れる今の時代、仕組み(S)を増やすだけで乗り切ろうとするのは、もう限界でしょう。


かつての成功体験を持つリーダーほど、「もっとルールを細かく・厳しくすれば解決するはずだ」と、さらに強力なS(刺激)を上書きしようとしがちです。でもそれは、使わないアプリの「更新があります」程度の情報です。


今、私たちリーダーに求められているのは、仕組みを増やすこと以上に、チームのみんなが「今、自分たちは何のために、どこに向かっているのか」という捉え方(O:OS)を共有し、アップデートしていくこと


これこそが、本質的な「組織開発」の仕事だと考えています。


4. AIは「答え」らしきもの、は、くれるけれど

さらに最近はAI(LLM)が、とんでもないスピードで、驚くべき進化を続けています。

AIは、人類がこれまで積み上げてきた知識の塊です。私たちの認知(O)を助けてくれる、何物にも代えがたい「外部脳」となりました。


実は今、心理学の世界では、AIや道具を含めて私たちの「心」なんだ、と考える新しい理論が注目されています。


  • 拡張認知: AIを単なる道具ではなく「自分の脳が外側に広がったもの」と捉える考え方。これは、個人の能力開発の視点を大きく変えるでしょう。


  • 分散認知: 知性は一人の中にあるのではなく、チームやAIとの間に「分散」して存在している、という考え方。これは、組織論の視点をガラっと変えかねないと思います。


これらは、まさにAI共生時代の新しいOSのカタチです。


でも、車に乗るようになると足腰が弱くなるように、AIという便利な「外部のO」に頼りきりになると、私たちが本来持っている「自ら考える力(システム2)」は、確実に退化します。


AIとの共生で一番大切なのは、AIが出した答えに飛びつくことではなく、AIに対して「そもそも、何が本当の課題なんだろう?」と、振り返り、内省し、問いを創る力


この「問い」だけは、現実の世界で、ヒトと関わり、汗をかき、怒り、悲しみ、喜びを味わいながら、責任を持って仕事をしている私たち人間にしか創り出せないものだと信じています。


5. チームで「難しい問い」を楽しんでこそ

心理学が「行動(R)」から「認知(O)」へと進歩してきたように、これからのリーダーシップも「管理(Sの強化)」から「意味づけ(Oのアップデート)」へとシフトしていくタイミングだと考えています。


仕組み(S)で再現性を保ちつつ、AIというパートナーを味方につけながら、人間にしか立てられない「新しい問い」をみんなで探していく。


正直、仕組みに乗っかるよりも、ずっと手間も時間もかかる「難しい」道のりです。


でも、その難しさの中にこそ、チームが本当に新しく生まれ変わるワクワクが隠されている。私はそう信じています。


皆さんのチームでは今、どんな「難しい・新しい問い」が生まれていますか?

それはきっと、「新しいOS」へのアップデートのお知らせかもしれません。


詳しく知りたい方のための参照リンク

 
 

最新記事

すべて表示
チームの「エネルギーの流れ」を整える

1. 私は「成果に興味がない人間」らしい 先日、ある有名なタイプ診断を受けた時のことです。 参画しているプロジェクトチームの他メンバーが軒並み「主導・積極型」と判定される中で、私だけがポツンと「安定・支援型」。 さらにレポートを読み進めると、そこには「成果への関心が相対的に低い傾向がある」と記されていました。 メンバーに爆笑されたことは救いでしたが、正直、驚きました。 「私はこれまで、成果を二の次

 
 
チームへの投資は、いつ「利益」に変わるのか?

潜伏するROIと、変化の閾値 1. 経営者の直球:で、いつ儲かるの? 「儲かるか、儲からないか」 これは 「実務実行(パフォーマンス)」の世界の話 です。 売上、利益、KPI。経営者がここを最優先するのは当然です。 しかし、なぜ多くの組織で「実務を回すスピード」を上げようとスキル研修やツール導入を繰り返しても、持続的な成長に繋がらないのでしょうか。 それは、私たちが直面している課題の性質を見誤って

 
 
「心地よいチーム」に未来はない

心理的安全性の誤用を越え、ドラマを共創する作法 1. 「見えない重力」に飲み込まれる個人 「優秀な人間を集めたはずなのに、なぜかチームが停滞している」 「リモートワークになってから、会議で誰かが発言するのを待つ『沈黙の時間』が増えた」 こうした悩みに対し、多くの組織が「個人のやる気」や「マインドセット」に解決を求めがちです。しかし、社会心理学の父 クルト・レヴィンは、人の行動を次のような冷徹な数式

 
 
企業情報

株式会社キャリアクラフトコンサルティング

資本金 300万円

適格請求書発行事業者

お客様へ
弊社WEBサイトの閲覧、誠にありがとうございます。現在、大変多くのご依頼をいただき、新規のご相談を伺えない状況となったため、一旦お問合せ先の公開を中止しております。
​ご容赦の程、どうぞよろしくお願いいたします。

bottom of page