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チームの「エネルギーの流れ」を整える

  • 曽根原 士郎
  • 2 日前
  • 読了時間: 5分

1. 私は「成果に興味がない人間」らしい

先日、ある有名なタイプ診断を受けた時のことです。


参画しているプロジェクトチームの他メンバーが軒並み「主導・積極型」と判定される中で、私だけがポツンと「安定・支援型」。


さらにレポートを読み進めると、そこには「成果への関心が相対的に低い傾向がある」と記されていました。


メンバーに爆笑されたことは救いでしたが、正直、驚きました。

「私はこれまで、成果を二の次にして生きてきたのだろうか?」と。


しかし、これこそが診断ツールの「面白いところ」でもあり、「危ういところ」でもあります。


私は決して成果を諦めたわけではありません。

むしろ、主導型の役者が揃ったこのチームにおいて、チーム全体が最大出力を出すために、今はあえて「安定・支援」という機能を、無意識かつ戦略的に選択しているのではないか。


そう捉え直したとき、診断結果は私を閉じ込める「檻」ではなく、自分とチームの「今」の力関係を知るための、極めて貴重な手がかりに変わりました。


2. 「類型論」という便利な地図を使いこなす

MBTIやビッグファイブ、エニアグラムといった、人をタイプや特性で分類する手法(類型論・特性論)は、今やビジネスにおける「共通言語」として定着しています。


これらが広く支持されるのは、複雑怪奇な人間関係に「わかりやすい補助線」を引いてくれるからでしょう。


  • 「地図」としての効用 初対面のメンバー同士が、互いの傾向をクイックに理解し、コミュニケーションのコストを下げる上で、これほど便利な「地図」はありません。


  • 陥りやすい罠 ただし、地図はあくまで地図であり、土地そのものではありません。「あの人は〇〇タイプだから、こういう仕事は向かない」というラベル貼りで思考を止めてしまう(システム1の起動)と、その時々で変化する個人の「本当の情熱」や「場への適応」を見落としてしまうリスクがあると感じています。


3. 「力動(ダイナミズム)」というコンパス

私が大切にしているのは、個人の性格という固定的な「点」ではなく、チーム全体に流れるエネルギーの「向き」や「強さ」です。


これを心理学では「力動(Dynamic)」と呼びます。


社会心理学の父、クルト・レヴィンは「行動(B)は、人格(P)と環境(E)の相互作用である」という有名な式を残しました。


B = f(P, E)


「安定・支援型」と出た私の行動(B)も、今のチーム(E)という重力の中での現れに過ぎません。場が変われば、あるいは目的が変われば、私のベクトル(エネルギーの向き)は全く別の方向を指し示すはずです。


4. チームを停滞させる「エネルギーの淀み」3つのパターン

経営者が注視すべきは、


個人の性格ではなく、チームの中に生じている「エネルギーの淀み(不適切な力動)」

です。


地図には載らない、現場の「空気の澱み」の代表例をいくつか挙げてみましょう。


① 「主導権の衝突」 ── 全員がアクセルを踏んでいる状態

主導型・積極型のメンバーばかりが集まり、全員が「自分の正解」を押し通そうとしているパターンです。一見、熱量が高いように見えますが、エネルギーが互いにぶつかり合い、相殺されています。結果として、「誰も他人の案に乗らない」「議論だけで実行が伴わない」という停滞が生まれます。


② 「沈黙の傍観」 ── 安全性が「ぬるま湯」に変わった状態

支援型・安定型のメンバーが多く、互いへの配慮が過剰になっているパターンです。「心理的安全性」を誤解し、摩擦を避けることが目的化しています。エネルギーは「衝突回避」にのみ費やされ、高い目標に向かうための「推進力」が失われています。


③ 「ミッションの空文化」 ── ベクトルがバラバラな状態

個々の能力(P)は高いものの、チームとしての「北極星(目的)」が共有されていないパターンです。各々が自分の信じる方向に全力で走っていますが、組織全体としては一歩も前に進んでいません。これは「個人のスキルの寄せ集め」で戦おうとする組織に最も多い淀みです。


5. 【投資と回収】経営は「場」のデフラグに着目しては

ここで、経営やマネジメントの視点から「投資の効率」を再定義してみます。


大切なのは、個人の性格を直そうとすることにリソースを割かないことです。

むしろ、チームの中に生じている「不適切な力動」を解消し、ベクトルの向きを揃えることにこそ、注力すべきだと考えています。


メンバー個々の性格を入れ替えることは、コストも時間もかかり、成功確率も低い投資です。


しかし、チームというシステムを調整し、一人ひとりのエネルギーが自然と「目的」へと向かうように「舞台(インフラ)」を整えることは、経営の意思一つで可能です。


澱みが消え、個々のベクトルが目的へと噛み合ったとき、実務実行のスピードは劇的に向上し、投資は利益へと姿を変えます。


6. コンパスについては…

類型論という「地図」で現在地を確認したら、次はその先へ進むための「コンパス」が必要です。


自分の、そしてチームのエネルギーが今どこで淀んでいるのか、どこに向かっているのか。

その「力動」をどう客観的に捉え、理想的な流れに整えるか、どんな介入が必要か。


近々、コクヨ様の公式コラムで、この「力動を可視化するためのライブラリとプロトコル」は、より分かりやすい形で具体的なヒントを含め提示される予定です。


手元の診断結果を「個人とチームのレッテル」として終わらせず、


「このチームの「エネルギー」の流れを整え、"最高のドラマ(成長と成果)"を演じてもらうためには?」


という、具体的な「問い」が立てられる"メジャーメント"こそ、この"VUCAでBANIっている令和"に求められているものだと、強く思っています。

 
 

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