「楽園」探しをやめて、ドラッカーの「あの言葉」を思い出そう
- 曽根原 士郎
- 1月12日
- 読了時間: 4分
更新日:1月20日
コクヨ株式会社様にコラム提供させていただきました。
是非、ご一読くださいませ!
【注意!】 とは言え、このブログはコクヨ株式会社様とは一切関係なく、お話しする内容も「私個人」の思想・信条・想いであることをご理解ください。
みんな、BANIってる
最近、職場のリーダーや若手社員の方々と話していると、底知れぬ「焦燥感」のようなものを感じることが増えました。 VUCA(変動・不確実・複雑・曖昧)なんて言葉ではもう生ぬるい。 今は「BANI」の時代と言っていいでしょう。
Brittleness(脆さ):昨日までの常識がポロリと崩れる
Anxiety(不安):何が正解か分からず、常に落ち着かない
Non-linear(非線形):努力と結果が結びつかない
Incomprehensible(不可解):起きていることの理由が分からない
この「脆くて不可解な世界」で、私たちの視界をさらに狂わせているのが、SNSによって加速した「過度な流動性」の煽りではないか……。今回は、そんな少し踏み込んだ話をしたいと思います。
「タイパ」でキャリアを語る違和感
SNSを開けば、「今の職場がすべてじゃない」「もっと自分の強みを活かせる場所がある」といった広告やインフルエンサーの言葉が溢れています。
誤解しないでいただきたいのですが、私は新しい出会いが増える潮流には大賛成です。加えて、自分を壊すようなブラックな職場からは、一刻も早く逃げ出すべきだとも思っています。
ただ、どうしても拭えない「気持ち悪さ」があるのです。 それは、どこかにフワッとした都合の良い「楽園」があるかのようなイメージを植え付け、目の前のチームで泥臭く向き合うことで得られる深いドラマや可能性を、あたかも「タイパ(タイムパフォーマンス)が悪い」と切り捨てさせるような空気感です。
石の上にも三年、は確かに古い。 でも、今の場所で葛藤し、仲間とぶつかり、何とか折り合いをつけて1つの形を作り上げる……そのプロセスでしか手に入らない「OSの書き換え」のような成長は、短絡的な「場所替え」では決して手に入りません。
忘れ去られたドラッカーの「and self control」
なぜ、こんなにも「組織の成長」と「個人のキャリア」がバラバラになってしまったのか。 私は、あの経営の神様、ピーター・ドラッカーが提唱した「MBO」という言葉の広まり方に、その一端があると考えています。
「MBO」が定義された原書では、実はこう書かれています。
"Management by objectives and self-control" ≒ 目標による管理と自己統制
ところが、世のコンサルタントと経営者様は、管理しやすい「MBO:目標管理」の部分だけを制度化し、後ろに付いた「and self-control:自己統制」をややスルー。 定義された"最善を尽くすために、自らの決定によって行動する自律性"を、良くて「個々人の能力開発」、悪いと「精神論」にしてしまいました。 結果として、企業から見た社員はまず「与えられた目標をこなす存在」であるべきで、「自分の価値を高めることは自己責任」のような風潮が生まれてしまったと感じています。
今、私たちが取り戻すべきは、この「and self control」の部分です。 組織という枠組みの中で、いかに自分自身を統制し成長させ、主体的にチームに関わっていくか。その「作法」が失われているのです。
組織を「舞台」と「ドラマ」に分けて考える
マッキンゼーの「7S」というフレームワークをご存じでしょうか? 組織の全体像を、戦略や構造などの『ハード』と、価値観や風土などの『ソフト』の、計7つの要素に分け、相互作用と整合性を捉えるマネジメントモデルです。 私はこれを現場で使いこなすために、中心の「共通の価値観(Shared Value)」をパーパスと置いて、上下2つに分けて考えています。
実務実行フレームワーク(ハードの3S)
戦略(Strategy)、組織構造(Structure)、システム(System)
会社が準備したチームという「舞台」
ビジネスプロセスともほぼ同義。誰がやっても一定の成果が出てくる「再現性/再活用性」や「効率性・スピード・省力化」が重視される。
組織成長フレームワーク(ソフトの3S)
スキル(Skill)、スタッフ(Staff)、スタイル(Style)
1つひとつのチームで描いていく「ドラマ」
そこで働く人たちの振る舞いや関係性、能力や活性度そのもの。WLBやDE&Iなどのトレンド、構成メンバーの個性や年代・志向によって「多様」にならざるを得ない。
これまでの組織開発は、このハードとソフトを混ぜこぜにして、とりあえず「研修」や「制度変更」で解決しようとしてきました。 しかし、BANIの時代に必要なのは、ハード(舞台)の整備とは別に、ソフト(ドラマ)の部分にどうやってメンバー1人ひとりの「and self control」を組み込んでいくかという、「自分たちと自分の、世界観・物語の創り方・作法(組織成長フレームワーク)」です。
今のチームに熱量が足りないのは、メンバーの能力が低いからでも、制度が古いからでもない。この「ドラマ」を自分たちの手でクラフトしていく手順を知らないだけ、そう捉えています。
「どこかにあるかもしれない楽園」を「タイパ」良く探し回るより、 出会えた場所で仲間と一緒に「1人ひとりが主役のドラマ」を描き、懸命に演じていくことこそ、より味わいある、人として醍醐味多い豊かな歩みだと思っています。