権力は「窒息」をもたらす
- 3月15日
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更新日:3月15日
1. スイッチを叩いても、光が灯らない「本当の理由」
先日、やっと"大人の事情"が解決し、コクヨ様の「TEAMUS」にて、チームの成果と成長を加速させる新提言、『成長循環モデル』のコラムが公開されました。
「力動を可視化するためのライブラリとプロトコル」にあたる"3つのステイタスと18の成長スイッチ"です。
まず「関係の質」から問い直し、チーム全員で「認知」を整えながら、適切なスイッチを入れることで組織のOSを書き換えていこうという、王道かつ誠実な、コクヨ様らしい提案です。(本当に嫌味なくそう思っています!)
しかし、こう思われた経営者もいらっしゃるはずです。
「そんなことはわかっている。だから私は現場に『本音で話してくれ』『もっと自律的に動いてほしい』と、何度も何度も何度も、直接出向いて伝えているんだ。だが、彼らは何も変わらないじゃないか!」
実は、スイッチを見つけることよりも遥かに困難で、かつ重要な「不都合な真実」があります。 チームという暗闇がいつまでも晴れないのは、スイッチの場所がわからないからではありません。
誰かがそのスイッチの前に立ち、部下が手を伸ばすのを無言の圧力で阻んでいるからです。
そして、その「誰か」とは、他ならぬ経営者やリーダー、あなた自身である可能性が高いのです。
2. 「窒息する空間」を作っているのは、あなたの「真剣さ」かもしれない
あるリーダーのエピソードをお話しします。
彼は非常に真面目で、会社と組織を心から良くしたいと願っていました。
ある会議で、彼はまっすぐメンバーの目を見てこう問いかけました。
「うちはもっと変わらなければならない。遠慮はいらない、君たちの本当の声を聞かせてくれ」と。
しかし、彼のその「真剣さ」が裏目に出ていました。
彼の目は笑っておらず、その表情には「正しい答えを期待する重圧」が滲み出ていました。
彼は「リスクを取る・責任を取る」時に見せるべき強靭な姿勢を、多様な視点から自由に論点を導き出すべき「対話」の場に、そのまま持ち込んでいました。
メンバーにとって、その空間は対話の場ではなく、一歩間違えれば断罪される「窒息しそうな尋問室」に映っていました。
その結果、何が起きたか。
沈黙に耐えかねた中堅社員が、その場をやり過ごすためにこう言いました。
「もっと挨拶をしっかりし合う文化を作りましょう」。
リーダーはその無難な意見を(まだまだだな。視座が低い。やっぱり私がもっと頑張らねば。みんなを導かねば!)と、内心ニンマリしながら「第一歩」として採用し、メンバーは重圧からの「解放」に安堵して解散しました。
これが、あなたが「真面目に本音を求めた」結果、手に入れているものの正体です。
3. 「問いかけ」という名の、恣意的なゴールへの説得
18のスイッチの一つに「知見共有」があります。 これが機能しない現場では、リーダーが「問いかけ」の皮を被った「説教」を行っています。
メンバーが勇気を出して出した知見に対し、リーダーはこう投げ返します。
「それで、誰が、どう良くなって、どんな成果が出るの?」
一見、もっともなロジックです。
しかし、この問いの裏側には「俺が決めた成果の出し方が一番正しい」という強烈なゴール設定が隠されています。
メンバーは瞬時に察知します。「何を言っても、結局はリーダーの正解へ誘導・説得されるだけだ」と。
説教は対話を殺し、誘導は知見を殺します。
「正論」という名の凶器を振り回しているリーダーの前では、メンバーは思考を停止させ、「拝聴モード」という名の内面的な退職を選択するしかなくなるのです。
4. エースへの「目配せ」が、若手の挑戦を奪う
組織成長は、これまでのやり方を捨て去る「適応課題」です。
しかし、多くのリーダーは、過去の成功体験を持つ古参社員や圧倒的な成果を上げているエースを、無意識に特別視します。
会議の席で、あなたがエースに向ける微かな目配せ、意見を求める際の信頼の傾斜。
それらを若手メンバーは驚くべき感度で察知します。
その瞬間、チームに「序列」という強烈な重力が生じます。
エースの発言が「いちメンバーの知見」ではなく「不可侵の正解」となったとき、組織のダイナミズムは失われ、メンバーは空気を読み、序列を守ることに全エネルギーを費やすようになります。
優れた経験を持つ者も、目的の前では平等な構成員のひとりです。
その「フラットな力学」を自ら崩している事実に、リーダーはあまりにも無自覚です。
5. 最初に入れるべきは、リーダー自身の「特権放棄」のスイッチ
チームに光を灯したいなら、他人のスイッチを探す前に、まず自分自身の「立ち位置」を解体してください。
「私は社長だから、リーダーだから、経験があるから、正しい」という特権を、一度ゴミ箱に捨てる覚悟があるでしょうか。
本当の適応課題とは、自分の中にある「私は正解を知っていなければならない」という傲慢さと、その裏返しである「正解を持っていない自分への不安」に、真っ向から向き合うことです。
今、私たちが生きているのは、かつてないほど不透明なBANIの世界です。
そんな世界で、リーダーたった一人がすべての正解を握っているなどということは、あり得ません。
「自分は正解を知らない。そして、手持ちの答えが正解ではないという事実に直面しても、それを受け止める勇気を持つ」
リーダーがそう覚悟を決め、自分が「不完全な一員」であることを認めたとき、驚くべき変化が起きます。 万能の神を演じるのを止めた瞬間に、あなたは本当の意味でチームに支えられ、共に答えを創るパートナーを得るという、至福の「解放」を味わうことになるでしょう。
この最初の一歩である「権力の力学」を解いたとしても、まだ壁は残っています。
次回は、どれほど関係性を整えても、組織の「ハードウェア(制度)」が足を引っ張るという不都合な現実を書いてみます。